備忘録

読んだり観たりしたものを記録します

Souvenir Souvenir

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東京アニメアワードフェスティバル2022にてちょっとものすごい作品を見てしまったのでちゃんと文章に残そう。

 

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Memories of the Algerian War | "Souvenir Souvenir" - Short film by Bastien Dubois

www.youtube.com

Youtubeの字幕設定をオンにすると日本語字幕が出ます。

フランス産のアニメーションで邦題は『語らない思い出』。
ちなみに「souvenir」とは日本語で
1.記憶
2.記念品、土産(みやげ)、形見 

を意味する。

fjjf.weblio.jp



「おじいちゃんは戦争の話をしない」
アルジェリア戦争での本当の話を聞き出したい孫と美しい思い出以外は何も話さなかった祖父。

(皮肉にも史実には忠実であるらしい)悲惨な戦場の妄想と現実パートの書き分け。特に現代パートは美術的で鮮やかな色彩がアニメーションとしてガンガン動く。そこにドキュメンタリーテイストの音が乗る。街中の喧騒が心地いい。その表現手法だけでも新鮮だが、血が繋がった家族という間柄でも踏み込むには非常にナイーブでセンシティブな問題として戦争が描写される。

何度も祖父に質問を投げてもなかなか語られない本当の戦争の姿。「いつまでその話をするんだ!?徴兵されて仕方がなかった。」加害側であっても彼(ら)はきっと十分に傷ついた。何十年経っても割り切れないほどに。しかし結局作中では祖父の心情が明かされることはほぼない。あくまでも客観的事実のみで構成される作風は下手に白々しさを感じさせず上品で、それでいて極めて現実的である。

フラフラの兵士(おそらく若かりし頃の祖父)を目にし、投げようと手にしていた石は投げられなかったラスト。裁くつもりなんてなくとも時として聞き出す行為そのものが批判となる。「後学のため」「知ることは大事だ」と言えば聞こえはいいが、直視すらできないトラウマを引きずり出すトリガーになり得てしまう。

森はるか+瀬尾夏美の映画『二重のまち/交代地のうたを編む』でもこの問題は映されていた。3月のあの日、大事な人と街を亡くした陸前高田の人々に聞く態度と言葉は何が正解かと模索する若者たち。中でも子どもを亡くした家族と対話するが「息子さんの話を聞くことが全然できなくて」と思い悩む三浦碧至さんの姿に重なる。

youtu.be

 


戦争を体験していない若者がどうやって戦争と向きあうべきか。
アニメーション表現としても秀逸なだけでなく、先日震災から11年を迎え今まさにウクライナ侵攻問題に直面している現在の私たちに必要なものが詰まっている気がする。そして全ての社会問題に立ち向かうためにも。